2014年
6月
06

G7の成果は確かのものか―日本外交は重要局面にある―

ベルギーで行われていたG7首脳会議が閉幕しました。

日本は「東シナ海と南シナ海での緊張を深く懸念」「北朝鮮の核・ミサイル開発継続を非難。拉致問題解決への迅速な対応」という文言を「G7首脳宣言」に盛り込むことに成功。中国を名指しで非難するまでは行けませんでしたが、一定の成果と言えます。

一方、アメリカの関心はロシアのクリミア併合問題でした。G7はロシアに対して結束して対処しているように見える宣言を発表しましたが、アメリカ、欧州、日本の立場の違いから、温度差がありました

アメリカは、ロシアのこれ以上の横暴には追加制裁を辞さずという、オバマ大統領にしては強硬な態度を崩していません(どこまで実質が伴うかは別にして)。

しかし、欧州のドイツ、フランス、イタリアは、天然ガスをロシアから輸入しているので、これ以上、ロシアを刺激したくないというのが本音です。

日本は、中国問題をクローズアップしたいので、欧米と足並みをそろえてロシア非難に同調しつつも、ロシアとは北方領土問題や中国問題があるので、あからさまなロシア非難は避けたいところです。

安倍総理はプーチン大統領と、クリミア問題が浮上する前から、良好な関係を築いてきました。その目的は、北方領土問題の解決の可能性があること(クリミア併合が起こったので、さらに解決の可能性が高くなっています)、そして、中国の覇権主義的行動を抑制するためには、ロシアが中国の後方から牽制することが有効であるからです。

ですから、今回、安倍総理は欧米と足並みをそろえて「G7首脳会議宣言」に同調しながら、水面下では欧州の独仏両国と接触し、「ロシアが国際社会で孤立せず、繋ぎ止めるように連携する」ことを確認しています。

日本は、中国の覇権主義を止めることが最大の課題です。そのためには、凋落の兆しがありますが、まずはアメリカとの日米同盟によって、強力な抑止力を確保することが大事です。そして、日本単独でも抑止できるように集団的自衛権容認や防衛力増強を急がねばなりません。さらに、ロシアと良好な関係を保ち、中国への牽制に一役買ってもらう必要があります(中露が接近しないためにも)。さらに、東南アジア、インド、オーストラリアとの連携を強固にし、中国包囲網をつくり上げることが、日本の生き筋なのです。

G7の世界経済に占める割合は約20年前の6割強から5割以下に低下しています。新興国の台頭によって、G7の影響力に陰りが出てきており、国際秩序が混沌としてきました。日本は「戦後70年間保ってきた体制にしがみついておれば良い」という甘い状況ではないことを認識しなければなりません。

国際情勢をしっかりと見極めながら、独自の外交を展開する時期が来ていると言えるでしょう

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