2015年
10月
06

マイナンバーがやってくる―『監視社会の怖さ』と『情報流出の恐れ』

闘魂メルマガvol.50 の再掲です。バックナンバーを読みたいという要望を多数いただきましたので、ブログで掲載させていただきます。

9月3日に改正マイナンバー法が成立しました。
報道は「こんなことができるようになるので便利になるよ」という論調とともに、「少し情報漏えいが心配ですね」という感じでした。
ところが、改正直後に、財務省がマイナンバーを、消費増税した際の負担軽減のための給付で利用する案を発表。 買い物時にマイナンバーカードの提示をさせようとしていますが、議論を巻き起こしています。
実際に、10月から「通知カード」が簡易書留で各世帯に届き始めました。
国民の皆様は「行政も効率化すると言うし、社会保障や税金も公平になるんでしょう。 便利にもなるとも聞いているし。まあ仕方ないですかね」と思われている方が多いのではないでしょうか。
マイナンバーは本当に良いものなのでしょうか。

●マイナンバーを簡単に言うと
マイナンバーを“政府の側”の視点から説明すると、以下のようになります。「まずは、国民一人一人に生涯不変の番号を強制的につけて、今まであちこちに分散していた役所にある個人情報(税金、社会保障など)を一元管理できるようにします。 行政の効率化です。将来的には預貯金口座、健康保険証、戸籍(結婚・離婚等)、健康診断、パスポート、クレジットカード、民間ポイントカード、交通ICカード、図書館などにも利用範囲を広げて、とても便利なカードにしようと思っています。 その結果、国民の皆様の趣味・嗜好、年収、金融資産、お金の移動、どこへ行ったか、何を買ったか、家族関係、学歴、職歴、健康状況(メタボ等)、病歴・通院歴、介護状況、今までの借金、犯罪歴、事故歴、自動車登録、すべてを国家が把握できちゃいます。国民を監視するのに便利です。 マイナンバーは、税金をできるだけ完璧に徴収し、社会保障を不正に受給するような悪い奴が出てこないようにするためには、国家として便利なんですよ。 将来的には皆様の資産にも課税したいと思っています。情報満載の個人情報については万全を期しますが、人間がすることですので、まあ漏れるでしょうね。その時は仕方ありません。 このシステムをつくることで、成長戦略の一つであるIT産業が活気づくのでいいではないですか。 システムをつくるのにお金はかかりますが、国民の皆様が悪いことをしなければ、問題ないでしょう。 反対をする人は、人様に知られたくないような悪いことをたくらんでいるからではないですか。でも本当にマイナンバーで税収が上がるかはわからないけどね」
かなりデフォルメして書きました。

●マイナンバーの利用範囲に注意
マイナンバー法は2013年5月に成立し、当初は「税、社会保障、災害対策」の三分野に限られているとしていました。
しかし、施行される前にもかかわらず、2015年9月3日に「利用範囲を拡大する法改正」をしたのです。 つまり、将来的にいろいろな分野へ利用範囲を拡大することは、既定路線となっています。「小さく産んで大きく育てる」という常套手段です。
最初は限定的と言っていますが、騙されてはなりません。政府は地方自治体に対して「利用拡大しなさい」と相当強く働きかけています。
すでに預貯金口座との連結、買い物時にマイナンバーカードの提示などに利用範囲を拡大しようとしています。
健康保険証あたりにマイナンバーを適用し始めたら、さらに危ないと思ってください。

●マイナンバー導入の経緯
もともと政府は、1970年代から「納税者番号制度」を本格的に検討してきました。
理由は「個人の所得を正確につかみ、税金をしっかり集めるため」です。ただ反発が強く、見送られました。
その後、1980年代には「マル優」問題もあり、グリーン・カード法案が可決しましたが、実施はされず廃案になりました。
2000年前後に住基ネットが可決・成立しました。この時も激論が起こり、一部の自治体が住基ネットへの不参加を宣言するなどの事態が生じました。
2009年の民主党政権で、社会保障のお金を配るために番号制度が必要と主張。さらに民主、自民、公明の3党は、消費税増税に合意。
自公政権になって、軸足が公明党の主張する「軽減税率」に移りつつも、マイナンバーの導入方針は変わらず、2013年に成立したのです。
そして改正法成立直後、財務省は「消費増税の負担軽減のためにマイナンバーを利用する」とすかさず言っています。
自民党はそこにIT産業を活性化させるという成長戦略をかぶせています。

●マイナンバー導入の思惑
紆余曲折を経て、目的がぼやけつつも成立したのですが、中央大学大学院の森信茂樹教授が言うように「マイナンバーはもともと徴税側の論理から来ていた議論」であるのです。
ですから、政府は「行政の効率化、国民の利便性の向上」などを重点的に告知していますが、ホンネは「税金をすみずみから取る」ということです。
「すみずみから取る」には、国民生活を監視しなければできません。 そのためには、預貯金口座にマイナンバーが結び付けられる必要があります。
今回の法改正で2018年1月から口座を開くときに、任意ですが金融機関からマイナンバーの登録を求められます。
さらに2021年には口座番号とマイナンバーの結び付けを義務化する方針です。
そうなれば、例えば、親が子供の口座に、まとまったお金を振り込んだ場合、突然、贈与税の徴収告知が来るかもしれません。
日々の生活を、国家が全部知っていることに不快感と恐怖感を覚えてしまいます。
この延長線を考えると、共産主義国家の密告制度にも似た、息苦しさを感じます。

●マイナンバーをなぜ拡充しようとするのか
政府はマイナンバーを定着させるために、利用範囲の拡大を狙っています。なぜでしょう。
ある自治体の担当者は「使い道が増えない限り、広く普及することは考えにくい」とコメントしています。「えーっ」という感じですね。
実はマイナンバーによる国民側のメリットはあまり無いと言われているのです。
「個人が行政手続きをする場面は一生でそれほどなく、行政手続きの際の添付書類削減というメリットのために、多額の税金を投入してマイナンバー制を導入するのは無意味」とも言われています。国税担当者は「さらに利便性が向上するように検討したい」と述べています。
つまり、マイナンバーは、国税当局が徴税しやすいシステムであり、かつ公務員が楽になるシステムであって、国民側の利便性はあまりないと自白しているようなものです。
とうことで、民間利用を促進し利便性を向上することで、マイナンバーを定着しようとする思惑があるのです。
その反面、民間の負担も膨大になってきます。

●住基カードのトラウマ
政府は個人番号カードを普及させるべく、2018年までに人口の約2/3にあたる8700万枚を普及させようと提言しています。
なぜ政府がここまで躍起になっているのかというと、2003年から始まった住基カードを普及させられなかった苦い経験があるからです。
だから、民間にも広げて、利便性を向上し、普及の後押しをしようとしているのです。しかし、広げれば広げるほど情報流出のリスクが高まっていきます。

●マイナンバーを拡充すると
そのような思惑もあって、行政事務以外の事務処理でも積極的に活用するように促し、地方自治体が条例を定めれば、ICチップの空き領域に様々な応用ソフトを搭載してもよいことになっています。
さらに民間企業における社員証、クレジットカード、キャッシュカード、健康保険証などに拡充することを政府は後押ししています。
たぶん、健康保険証に拡充すると、爆発的にマイナンバーの個人番号カードは普及することになるでしょう。
その上、政府はビッグデータを取るために、カルテや診療報酬明細書(レセプト)などの管理に活用することも検討しているので、国民の病歴・通院歴まで国家が知ることになります。
レンタルビデオやアマゾン、スーパーのポイントも連携すれば、趣味・嗜好、何を買ったかもわかってしまいます。
財務省は、消費増税の影響を緩和するために、軽減税率ではなく給付金を考えています。 その場合、マイナンバーの個人番号カードを買い物時に提示させ、何を買ったかを集計・記録することも検討しています。
マイナンバーの個人番号カードを多くの国民が持ち始めると、あらゆる場面での本人確認のために提示を求められる可能性があります。
実質的に「身分証明書」となり、常時携帯が義務化される可能性があります。
特に2020年東京オリンピックでは、テロ対策として、個人番号カードによる職務質問が徹底されるかもしれません。
IT産業にとっては特需で、関連市場は3兆円とも言われており、IT企業がつくる「新経済連盟」は商機と見て、「マイナンバーをさらに活用すべき」と提言しています。
本当に、これでいいのでしょうか。

●マイナンバーになぜ反対なのか
(1)財産税につながる
銀行口座などとマイナンバーが連結すると、税務当局は個人資産を把握できます。その結果、当局は金融資産などに「財産税」を掛けることが可能になります。
そのような発言が政府周辺からと聞こえてきます。財産税は二重課税なので、財産権の侵害であり、憲法違反です。
しかし、マイナンバーによって、資産状況を把握できたら、当局は課税したいという誘惑に駆られるでしょう。
ちなみに、諸外国では、資産(預貯金口座、株式、不動産、貴金属)などの保有状況は把握していません。
給与や報酬などの所得を補足し課税します。資産については譲渡するなどの所得が発生した際の把握が、国際的に普通なのです。

(2)監視社会
◎マイナンバーは監視社会になる怖さがある
マイナンバー制は、コンピューター社会の“怖さ”が出ています。
膨大な個人情報を集積することになるマイナンバー制は、国民の管理・監視の手段として機能する危険性があります。
効率化の反面、「一網打尽に国民の情報をつかめる」ことは怖いのです。
国家が国民の全情報を一元管理し、運用した場合、究極の「監視社会」が出現するでしょう。

◎どこまで広がるマイナンバー
このままいくと、マイナンバーの利用範囲は、どんどん拡大し、国民の趣味・嗜好、年収、金融資産、お金の移動、どこへ行ったか、何を買ったか、家族関係、学歴、職歴、健康状況(メタボ等)、病歴・通院歴、介護状況、今までの借金、犯罪歴、事故歴、自動車登録、すべてを国家が把握できてしまうのです。
個人情報をトータルで見れば、思想・信条までわかるでしょう。
将来、クレジットカードを作るときはもちろん、レンタルDVDを借りるのも「マイナンバーは?」と聞かれるようになる可能性があります。
そして、購買履歴やレンタル履歴は、ビッグデータとして様々な商売に利用されるでしょう。
マイナンバーをたどれば、その人の人生もたどれることになれば、愉快に感じる人はいないでしょう。窮屈な社会がきます。
国が個人の財布の中身をのぞく道具にもなり、かなり抵抗感があります。

◎国家が個人情報を集めて良いのか
そもそも、国家が私有財産である資産なり、個人の趣味嗜好なり、健康状態などを全て知ることが正義なのでしょうか。
その発想は、すべてが国家の持ち物とする共産主義そのものです。共産主義の行きつくところは、国家による統制です。
平等を実現するために、違うことをする人を監視し、場合によっては密告を奨励するのです。全体主義ですね。
もし独裁的な権力が立ち上がった場合、治安維持や事件捜査を名目にした利用につながる可能性があり、国民への監視が強まります。
マイナンバーは包括的な形での国の過剰な監視の仕組みと言えます。しかし、国家に個人財産を管理する権限はないのです。

◎性悪説に立った「プライバシーの侵害」
国家に個人の情報を差し出す理由がありません。
何を買ったか、どんな病気になったか、通帳にはいくらの残高があるのかなどを知ることは、最大の「プライバシーの侵害」と言えます。
国が国民の情報を一元管理しようとすることが間違っています。
そもそもその発想自体が性悪説に立っており、国民はズルする者、悪いことを隠す者、という先入観があります。

◎自由が喪失し、国民が海外へ逃亡する
このマイナンバー制度が導入されると、国民は逃げられなくなります。収入から資産、そして老後まで、国家の管理下に置かれてしまいます。
自由の余地が狭まっていくのです。監視社会が度を越すと、やがて国民は海外に流出していくでしょう。

◎税金を納めたくなる徳ある政府へ
税金が高くなれば、国民は税金を納めたくなくなります。納めたくない政治をしておきながら、個人情報を丸裸にして、税金を取り立てるのは悪代官のようですね。
発想を逆転させ、政府は、国民が税金を払いたいような国にしなければいけません。
理想を言うと、国民からふんだくるのではなく、安い税金と理想国家を掲げ、自ら税金を差し出すような国にしなければなりません。
日本は監視された国家社会主義への道ではなく、自由主義、民主主義の価値を大切にした「自由の大国」を目指すべきです。
国家が個人を管理する「大きな政府」ではなく、安い税金で、国民が税金を納めたくなるような「小さな政府」「徳ある政府」を目指すべきです。

(3)情報流出のリスク
◎利用拡大を目指しつつ、秘匿するという矛盾
政府の思惑通り進めば、マイナンバーの利用範囲は、どんどん拡大していきます。
特に医療情報や戸籍情報などは、究極の個人情報であり、情報が漏洩すれば甚大な被害が起きます。
例えば、精神疾患やガンなどの病名・病歴を知られ「就職できなかった」「誹謗中傷を受けた」という話は少なくありません。
内閣官房も「マイナンバーはクレジット番号に相当する」と言っています。
クレジット番号に相当すると言いつつ、予想される運用はかなりオープンにならざるを得ません。
利用拡大を目指しながら、マイナンバーが漏えいしないようにすることは、無理があり矛盾です。

◎マイナンバーは必ず洩れる
識者も「番号は必ずダダ漏れ状態になる」と言っています。今までの住民票コードなどの個人番号は、原則、本人と行政機関だけが知り得る非公開の番号でした。
しかし、マイナンバーは本人と行政機関以外の第三者も知り得る公開の共通番号なのです。
例えば、企業で働いていると、税務事務としてマイナンバーを企業に伝えなければなりません。
中小零細企業に絶対漏らさないほどのセキュリティが可能でしょうか。表計算ソフトで管理するぐらいでしょう。人的にもシステム的にも保護できません。

◎伝えたくない相手にも提出しなければならない
パートやアルバイトをする際、勤め先にマイナンバーを伝えなければ給与がもらえません。少し怪しげな企業の場合でも同じです。
倒産でもされたら、マイナンバーがどこへ垂れ流しになるかわかりません。自分の情報の自己コントロール権はどうなるのでしょうか。
また、講演や原稿執筆などでお金をもらう場合、依頼主は講師からマイナンバーを受け取らなければ謝金を払えません。
その過程で、情報を完全に保護することは至難の業です。

◎たとえシステムが万全でも人的に漏れる
「消えた年金」問題の時、国会議員やタレントの年金未納が暴露、報道されました。
あれはデータにアクセスできる公務員が違法に検索してマスコミに漏らしたからできたのです。
個人情報の違法流出は、公務員のモラルが低下すれば、防ぐことはできないのです。

◎生涯不変の番号なんて古すぎ
ハッカーの被害が相次いでいる昨今、パスワードを頻繁に変えるよう求められる時代に、一生変わらないマイナンバーというパスワードを導入するのはあまりに危険で、愚策そのものと言えます。
一つの番号であらゆる情報を管理し一生涯使う仕組みは、明らかに古いシステムです。
アメリカでは逆に、共通の社会保障番号を使わない動きが始まっています。
年金情報流出のような漏えいが起きるのだから、マイナンバーではあらゆる情報が漏れると考えた方が無難です。

◎なりすまし(アメリカと韓国の事例)
なりすましの犯罪が増えるでしょう。高齢者のマイナンバーを盗めば、なりすまして年金を受給することが可能です。
アメリカでは、税の還付申告や不正就労など、年間900万件を超えるなりすまし犯罪で手が付けられなくなりました。
2006年~2008年の間に、なりすまし犯罪被害が1170万件に上り、被害総額は2兆円にもなりました。
さらにサイバー攻撃で、今年の2月8000万件の社会保障番号が流出しています。
韓国でもインターネット経由で、大量流出も起きています。内部犯行で昨年1月2000万件の住民登録番号が流出。ネットの闇市場で番号と名前などが売買されました。
アメリカでも韓国でも、マイナンバーのような共通番号の危険性が指摘され、分野別番号制などに見直そうとしています。そのために多大な費用と労力をかけています。

◎海外の事例
イギリスでは、全国民に番号を付け、顔写真とともにデータベースに登録する制度が2006年に成立しましたが、プライバシー侵害の懸念などが広がり、10年に廃止されました。
カナダも番号の利用制限に踏み切っています。
世界の趨勢は、共通番号を使わずに情報化社会に対応しようとしているのです。
先述したように、アメリカや韓国は分野別番号制度へ移行しようと苦闘をしています。
オーストリアのように、分野別番号制度を用いながら、暗号を使った情報連携の効率化を図るという「セクトラルモデル」のような例も存在しています。
ドイツやイタリア、オーストラリアは、目的を納税に限るなど、分野別番号制度にしています。

◎共通番号は監視のための道具
ドイツやオーストリアでは、人を集団管理する国家権力の危険性を、ナチスの歴史を通して体感しているため、いろいろな利用制限をかけています。
韓国が共通番号を採用したのは、北朝鮮のスパイ摘発のためです。
ということは、ドイツ、オーストリア、韓国などを見るに、共通番号は監視のための道具という認識があることがわかります。

◎日本医師会
政府は将来的に、マイナンバーをカルテ、健康保険証、戸籍にも結び付けることを検討しています。
自分の病歴や血縁関係など、究極の個人情報を盗まれる恐れが出てくるのです。
日本医師会は健康保険証がわりに使用することについて「病歴などの患者情報がマイナンバーと結びつく危険性が高まる。 マイナンバーは生涯変えられず、病歴が漏洩すれば取り返しがつかない。患者のプライバシー保護や安心の観点から単純に容認できない。 患者の病歴という極めてプライバシー性の高い情報を第三者が管理してはいけない」と反対しています。

◎悪徳業者が情報を集めて完成させる
世間には悪徳業者なるものがいます。悪徳業者がマイナンバーを軸に様々な情報を名寄せし、プライバシーを丸裸にしかねません。
今後、預貯金や健康情報などが結び付けば、悪用する価値は高まるので、その危険性は高まるばかりです。
例えば、現在でも複数の会社から買ったビッグデータを用いて、一個人の情報をあぶり出すことに歯止めがない状態なのです。
これにマイナンバーが結び付けられると、あらゆる情報が網羅された名簿が完成し、ちょっとしたクライシスが起こる可能性があるとも言われているのです。

◎個人情報を集中させない
情報漏えいによるプライバシー侵害を回避しようとすれば、個人情報を集中させないことに限ります。
将来的に、一つのデータ流出で、芋づる式にデータ流出の恐れがでてきます。情報の分散管理が適切なのです。
マイナンバー制はその正反対です。

◎マスターキーを作ってしまった
このような危ないマイナンバーをつくらなくても、分野別の番号だけでよかったのです。もし、悪用されたら、パーツの交換のように、その番号を変えれば良いからです。
ところが、政府は、マイナンバー=共通番頭という最も危ない“マスターキー”を使う仕組みをつくってしまったのです。

◎ネット流出した情報は消せない
年金情報流出のような漏洩は今後もあり得ます。マイナンバー制では、収集される情報も年を追って増えていので、情報が流出すると、被害も甚大となるでしょう。
個人情報が集積したマイナンバーが流出したら、普通の国民には手に負えなくなります。一度漏洩した個人情報は、ネットの世界では消せないことは常識です。
政府は利便性をPRしていますが、私たち個人の情報が漏れる不安の方が強いと言えるでしょう。
個人情報は政府のものではなく、私たち国民一人一人のものです。勝手に集めて使わないでいただきたいと思います。

(4)民間への負担が大きい
◎会社におけるマイナンバーの厳重管理は可能?
マイナンバー制は、会社にかなりの負担を強いるものとなっています。
会社は、従業員、パート、アルバイトから番号の申告をしてもらい“確認”をしなければなりません。
そして漏えいしないように“管理”します。退職後は確実に“破棄”しなければなりません。
会社の大小を問わず、番号を厳格に管理することが求められるのです。

◎セキュリティシステムをどこまで組めるか
ですから、会社は自前でセキュリティシステムを用意しなければならないのです。
マイナンバー法では、支払調書の作成担当者以外の人が、番号を保管することを禁じています。
会社の中には、厳重管理をするため、番号を扱う部署だけフロアを別にするといった対応を検討しているところもあるほどです。
しかし、大手セキュリティ企業は「3000人以上の企業しか相手をしない」と言っており、9割以上の中小零細企業は困ってしまいます。
中小零細企業は、セキュリティにお金を掛けられないので、表計算ソフトなどでの管理することになるのでしょうか。
中小零細企業に万全なセキュリティなどできないでしょう。
しかし、従業員などの情報を外部に漏らすと、最高で4年以下の懲役や200万以下の罰金刑を科せられてしまいます。

◎行政の仕事を民間に押し付けている
雇用主である民間企業は、源泉事務から年末調整までタダ働きさせられ、何の補償もされていません。
加えてマイナンバーによって、付番事務や特定個人情報の適正管理事務まで増えていくのです。ハッキリ言えば、行政の仕事を、民間に押し付けているようなものです。
ややこしい実務ばかり増えて、起業する意欲も削がれるというものです。
とういことで、民間にとってはメリットよりも義務感の方が大きいと言えます。

(5)費用対効果に疑問
◎どれほどのコストがかかるかわからない
マイナンバー制には、多額の税金がかかるでしょう。当初の見積もりで3000億~5000億の予算が必要とされていました。
2015年までの予算で、すでに2180億円となっています。これから、地方自治体も含めてどれだけ予算が膨れ上がるかわかりません。
さらに、年間数百億円の維持費が必要と言われています。その上、民間企業などのすべての事業所のシステム修正にも膨大なコストがかかります。
ということで、システム完成から運用まで全体でいくらかかるのか、全体像さえつかめていないのです。

◎マイナンバー導入の効果がどれほどあるのかわからない
びっくりしますが、予算に見合った効果が得られるのかわからないまま議論が進んでいったのです。
「数千憶円かけてマイナンバー制を導入しても、新たに補足する対象から得られる税収はどれほどのものなのか」という危惧があります。
数千億から、場合によっては兆単位のお金を使っても、補足する税収は、それ以下という研究もあるほどなのです。

◎税収の大幅増は幻想
マイナンバー制による税収の大幅増は幻想とも言えます。番号が付くので正確な所得の補足ができ、税の不公平感がなくなると思っている人も多いようですが、誤解です。
所得を精緻に補足しようとすれば、社会で行われている膨大な商取引に番号を付け、1件ずつチェックしなければなりません。
八百屋で野菜を買うのも商取引であり、1億人以上いる日本で補足することは、SFの世界だと言われています。
マイナンバー制をつくって、税収増は、どれほどの効果があるのか怪しいと言えます。
内閣官房も「そもそもマイナンバー法によって、税収も捕捉率が上がるとは言っていません。 ただし、国民と法人に番号が付くことで、チェックの目が働くのではないかという牽制効果が期待でき、その点では税収が上がるかもしれません」と述べているのです。

◎詐欺のような制度!?
監視社会の懸念、個人情報流出の危険まで犯しながら、費用対効果がそれ程でもなければ、何のための導入なのでしょうか。
国家社会主義の実現のためとしか言いようがありません。
ある弁護士は「マイナンバー制度は、いくらアクセス制限をかけても情報の不正取得の危険性は今より増す。 ニセ電話詐欺など犯罪者は、預貯金情報を狙うだろう。 情報が狙われる危険性、高額な導入費用というデメリットと、脱税防止などのメリットを比較しても詐欺のような制度」と酷評しています。

●マイナンバーは息苦しい国にしてしまう
税金の効率的な徴収、社会保障の不正受給をなくし、行政効率を向上させるためにマイナンバーを肯定する人も多いと思いますが、 今まで列挙してきたように、それ以上のデメリットがあるのです。
マイナンバーは「国民は誰しも悪いことをする」という性悪説に基づいており、国民監視インフラとなる危険性が大きいのです。
マイナンバー法は、国民の個人情報を国家が一元管理する国民総背番号制であり、その結果、国民のプライバシーを侵害し、大きな政府による国家社会主義への道を辿ることになり、監視社会とうい息苦しい国へとなってしまう法律です。
将来、専制的な政府が現れたとき、恐怖政治へとすぐに転換するでしょう。
「すべて国民は、個人として尊重される」と定めた憲法13条にも抵触します。
「国民全員にIC仕様の個人番号カードを携帯させ、警察官が職務質問した際、瞬時に身元や犯歴が判別できる。カードを所持していない人は、最寄りの交番に連行できる」、このような「データ監視国家」が想像できます。
個人情報の漏えいリスクの高い、現代版通行手形のようなものです。

●分野別番号制度で十分
行政の効率を上げるならば、分野別に番号を振って、リスク分散をするべきです。分野別番号制度で十分です。
諸外国は共通番号の弊害から、いかに逃れるかを模索しているのです。
日本は、諸外国があえいでいるシステムに、今さら飛び込んでいく必要はありません。

●利用拡大にならないように注視しよう
10月からは粛々とマイナンバーが記された「通知カード」が各世帯に届くと思います。
私たちは、監視社会の懸念、そして個人情報保護の観点から、政府がマイナンバーを利用拡大に行かないように注視しなければなりません。
民間まで利用拡大したら、大変なことになります。
安心して住みよい国にするために、マイナンバーの危険性に気付いていただくことを願って止みません。

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