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保守でありながら共謀罪に反対する理由

国会では共謀罪について議論がなされており、ようやくマスコミも様々な報道を始めています。私たちは保守政党ですが、今回の共謀罪は問題ありとして賛成しかねます。もちろんテロ対策は必要ですが、今回の共謀罪論議は、あまりにも稚拙かつ拙速で、正当性が薄いと考えています。その理由を私の闘魂メルマガvol.83(2017年2月7日発行)で発信していました。共謀罪について注目が集まっていますので、当ブログに転載いたします。[ブログの最後に4月15日発出の党声明も添付しています]

 

「共謀罪(テロ等準備罪)は本当に必要か―捜査権濫用の恐れ―」
2017年2月7日発行 江夏正敏の闘魂メルマガ vol.83

現在、国会では犯罪の計画段階で処罰する共謀罪(テロ等準備罪)新設の審議がなされています。共謀罪とは、二人以上の者が、犯罪を行うことを話し合って合意することを処罰対象とする犯罪のことです。共謀罪はこれまで2003~05年に計3回、国会に提出されましたが、「市民団体も対象になる」「心の中で思ったことで逮捕される」などの世論の反発でいずれも廃案になりました。それが今、テロ対策を理由に、共謀罪新設に向けて動いているのです。国民の皆様からすれば、「東京オリンピックもあるし、世界中でテロが横行しているのだから、テロ対策を講じる必要があるのではないか。共謀罪の内容はよくわからないが、テロ対策なら仕方あるまい」と感じている方も多いのではないでしょうか。今回のメルマガで、共謀罪の論点整理と、新設を目指す当局の真意に迫りたいと思います。

●政府の説明―2020年東京オリンピックに向けて
政府は2020年の東京オリンピックに向けて、テロ対策の必要性を訴えています。 そのテロ対策の一環として、「国際組織犯罪防止条約」を批准するために、共謀罪の新設が必要だと説明しています。過去の法案の修正点として、適用の対象を「組織的犯罪集団」に限定し、一般人を対象としないとしています。また、犯罪を実行するための「準備行為」を要件としています。条約の規定に従うと、対象となる「懲役・禁錮4年以上の重大な犯罪」は計676に上ります。あまりにも対象が多いので、政府は300弱に減らすとも報道されています。

●国際組織犯罪防止条約の批准のためと言うが・・・
先述したように、政府は共謀罪について、2000年の国連総会で採択された「国際組織犯罪防止条約」を批准するために絶対必要なのだと説明しています。本当でしょうか。例えば、「人種差別撤廃条約」は締約国に対し、処罰立法措置をとることを義務付けていますが、日本は1995年にこの条約に批准しているにもかかわらず、立法措置を講じていません。つまり、条約上義務付けられた立法措置をしなくても、条約の批准はできるのです。そもそも各国が行う条約の批准について、国連がその適否を審査していません。原則、各国が一方的に批准の意思表示をすれば足りるので、現状で批准の障害となるものはないと思われます。批准できないのは国内に共謀罪がないからではなく、内閣が国会の承認を経て批准の意思表示を行わないからに過ぎません。ですから、「共謀罪」を立法化しなければ「国際組織犯罪防止条約」を批准できないというのは、筋が通らないと言えます。

●国際組織犯罪防止条約はテロ対策ではない
そもそも、共謀罪新設の理由としている「国際組織犯罪防止条約」は、テロ対策を念頭に置いて成立した条約ではありません。マフィア等による司法妨害についての対処や、国際的な資金稼ぎや資金洗浄を各国の協調によって断ち切ることを目的として締結されたものです。条約の採択は2000年ですから、現在とは国際情勢が大きく異なっていた時代の条約です。ちなみに、アメリカの9.11テロ事件は2001年です。

●共謀罪新設は東京オリンピック決定前から議論されていた
2020年東京でのオリンピック開催が決定したのは2013年です。政府は、それ以前に共謀罪新設を3度国会に提出しています。その際、テロ対策についてほとんど考慮されていませんでした。にもかかわらず、2020年東京オリンピックの開催にあたりテロ対策が重要だとして、この条約を引き合いに出すのは、ご都合主義と言われても仕方がないと思います。共謀罪が本当に必要なら、正々堂々の論陣を張ればよいはずです。

●現行法においても対応は可能
テロ対策として共謀罪が必要という説明がなされています。本当でしょうか。国際的な枠組みとしては「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」など5つの国連条約、その他8つの国際条約が採択されており、日本はすべて締結し、国内法の整備も済ませています。また、テロを未然に防ぐ手段としてはすでに殺人予備罪や凶器準備集合罪があり、爆発物取締罰則や破壊活動防止法などの特別法には予備罪、陰謀罪、教唆罪の処罰が広く規定され、その数は70以上に及んでいます。現行法においてもテロ対策は可能と思われます。

●既遂→未遂→予備→共謀と処罰規定を用意している
日本の刑法は、原則として法益侵害(例えば生命・身体・財産等への侵害)が生じて(既遂)初めて犯罪が成立することを原則としています(既遂処罰)。例外として、法益侵害の結果が発生していなくても、その犯罪行為の実行着手があれば処罰できる未遂処罰の規定があります。例えば、殺人罪、放火罪、往来危険罪等をはじめとした多くの犯罪に未遂処罰の規定があります。さらに、既遂・未遂処罰以外に、一定の重罪についてはその犯罪の準備を行う「予備」を例外的に処罰しています。例えば殺人予備罪、放火予備罪、内乱予備罪等です。また、具体的な準備行為を必要とせず「共謀」のみで成立する犯罪が現行刑法にもあります。特別重大な法益侵害の危険性のある犯罪行為については「共謀」そのものを犯罪として処罰する、という考えです。具体的には内乱陰謀罪(78条)、外患陰謀罪(88条)、私戦陰謀罪(93条)です。すでに現行法でも共謀罪と同様のテロ対策が可能とも言えるのです。

● 銃刀法、共謀共同正犯理論もある
また、日本は銃砲刀剣類所持等取締法という銃砲や刀剣の所持を厳しく取り締まる法律があります。これによっていわゆる実際の殺人等の実行行為にいたらない、テロ行為の準備行為を取り締まることも十分可能です。さらに、刑法には明確な規定はないのですが、判例によって共謀共同正犯理論が確立されています。これによれば共謀に参加しただけで直接実行行為を行っていない者の処罰も実際に行われています。

●根本的に刑法を破壊する
今まで論じてきたように、刑法は既遂処罰を原則とし、例外として未遂を罰し、より例外的なものとして予備を罰し、非常に重大な法益に対するものについてだけ共謀を罰しています。日本の刑法はきちんと法的侵害の度合い、危険性に応じて、既遂→未遂→予備→共謀といった順に、原則→例外という体系をとって犯罪を規定しています。しかし共謀罪はこの原則を無視して、一気に「共謀」を広く罰するように変更しようとしています。これは近代刑法の原則に真っ向から対立するものです。

●「一般人は対象外」は嘘
政府は、「一般人は対象外」とし、対象は「組織的犯罪集団」に限ると説明していますが、誰も公然と犯罪集団とは名乗りません。結局、判断するのは捜査機関です。政府や警察にとって都合が悪ければ、どんな団体でも「犯罪集団」と認定されかねません。また「準備行為」を要件としていますが、極めてささいな行為でも犯罪と関連づけることは可能なので、何の限定にもならないと思います。そもそも、テロ防止を目的として共謀罪を新設するならば、その対象は暴力団などではないでしょう。ずばりテロリストです。そして諸外国のテロ事件の例を見れば、テロリストは一般人と変わらぬ生活をしていることが多いです。そのようなテロリストを共謀罪で摘発するためには、一般人にも広く嫌疑をかけるしか方法はありません。つまり、共謀罪は本来、一般人を捜査の対象とすることを認めなければ意味のないものなのです。政府の説明には嘘があります。

●共謀容疑で捜査権濫用の恐れ
共謀罪の対象犯罪は300弱もの数にもなりそうです。これだけ拡大されると、「共謀罪」容疑での捜査・取調べは可能です。共謀容疑での捜査権濫用の恐れがあるのです。 結果、有罪にならなくとも、不起訴になろうとも、「相談した、話し合った」というだけで、警察は強制捜査に乗り出すことができることになるのです。「共謀罪」の本当の怖さはここにあります。

●盗聴・たれ込み・潜入捜査
「共謀罪」を立件するためには、「○月○日にどこそこでこういう内容の謀議がなされた」という証拠をつかむ必要があります。その「謀議」はそもそも仲間同士の「内輪」のものですから、「外」からの捜査だけでそういう証拠をつかむのは、ほとんど不可能でしょう。つまり、電話やメールの盗聴、部屋や車に盗聴器を設置、内部の人間に見返りを約束して「たれ込み」させる、潜入捜査、おとり捜査等々、「共謀罪」の立件のためには、こういう捜査手法が不可欠になってきます。結局、新しく国民に向けた諜報機関を作ったのと同じ効果を生むことになります。国民の自由、普通の生活が危機にさらされる可能性が大きいと言えます。

●歯止めがどんどんなくなる
2016年に刑事訴訟法が改正される以前は、盗聴という捜査手法は、薬物、銃器、組織的殺人などいわゆる暴力団関係の組織犯罪4類型を対象とする捜査に限定されており、かつ、通信事業者の常時立ち会いが義務付けられていました。ところが昨年の改正によって、盗聴の対象となる犯罪は窃盗、詐欺、恐喝、逮捕監禁、傷害等の一般的な刑法犯を含む広い範囲にまで拡大されました。さらに、通信事業者の立ち合いも不要となっています。このような状況の中で、共謀罪が成立すれば、より盗聴は蔓延することになるでしょう。共謀罪は共謀そのものが犯罪行為とされるため、盗聴の必要性は容易に認められてしまう可能性が高いと言えます。

●司法取引制度と冤罪
司法取引制度の問題もあります。これは、他人の犯罪の立証に協力する代わりに自分の罪の減免をしてもらうよう検察官と合意をするものです。共謀罪はその性質上、話し合い内容を立証する場合に、共謀に参加したとされるものの証言は重要なものと扱われるでしょう。司法取引制度と共謀罪の自首減免制度を悪用すれば、虚偽の密告と自白をすることで、誰かを共謀罪へと陥れることも不可能ではありません。共謀罪と司法取引の組み合わせは、新たな冤罪の強力な温床となる可能性があります。

●心の内面が犯罪―息苦しい社会
刑法は、処罰の対象を外部から客観的に認識できるような「行為」のみに限定し、心の中で考えただけでは処罰しないとしています。これは憲法19条「思想・良心の自由」が根底にあります。しかし、共謀は、二人以上の犯罪を行うという意思の合致ですが、それが共謀罪に当たるかどうかを決めるのは、その合意の内容によります。その合意の内容とは、人の内心にのみ存在するものである以上、共謀罪は内心そのものを処罰の対象とするものと言わざるを得ません。憲法違反の恐れがあります。内心まで踏み込むことは、宗教の領域と言っても良いでしょう。共謀罪に準備行為の要件を加えたとしても、内心そのものへの処罰という性質を免れないのではないでしょうか。行為に至らない、人の心の内面を言葉にしただけで取り締まられるとすれば、それは想像するだけで息苦しい社会となります。話し合った人々の意思を、その真剣さも含めて、外部からどのように確認出来るのでしょうか。確認困難な“合意”によって処罰されるとしたら、思想・良心の自由にとってこの共謀罪は脅威となります。

●捜査権の拡大が目的
結局、共謀罪新設は、捜査当局の捜査権限の拡大が目的なのではないでしょうか。今まで述べたように、テロ対策や条約批准は名目にしか見えません。犯罪計画の合意・話し合いを捜査の対象とするため、いずれは電子メールも含めた盗聴や、たれ込み、おとり捜査といった捜査手法が正当化されることを狙っていると思います。犯罪そのものの成立よりも、「共謀が行われているのではないか」という嫌疑の下に広く捜査活動を行える根拠が欲しいのかも知れません。誰でもターゲットを決めれば、盗聴・監視を合法的に行えるような法的基礎を手に入れたいのだと思われます。このようなことが、国家社会主義的な安倍政権下で成立することが怖いのです。

●共謀罪は必要ない―要は政治家の覚悟
今までの議論で、共謀罪を新設しなくても、テロ対策は可能と考えます。あとは、政治家のテロを起こさない覚悟が重要となります。オウム教がサリン事件を起こしたときでさえ、政府は破防法の適用ができませんでした。正直、オウム教に適用できないならば、誰に破防法を適用するのでしょうか。政治家が怖気づいたら、いくら法律が整えられ、自衛隊や警察が優秀であっても、宝の持ち腐れとなります。様々な危険を孕んだ共謀罪がなくとも、現行法で対処できるのです。その法律を運用できず、屋上屋を重ねるような危険な共謀罪が新設されたら、国民生活の自由が脅かされてしまいます。共謀罪新設よりも政治家の気概を立て直すことこそ、東京オリンピックに向けて大切なことなのではないでしょうか。

 

いわゆる「共謀罪」法案の国会審議入りを受けて(党声明)

平成29年4月15日  幸福実現党

「今月6日、いわゆる共謀罪、テロ等準備罪を新設する組織的犯罪処罰法改正案が衆議院で審議入りしました。共謀罪が設けられれば、277もの犯罪について計画段階での処罰が可能となります。かねて捜査当局の行き過ぎた対処もみられるなか、共謀罪新設には、盗聴をはじめとする捜査権濫用や人権侵害を招くおそれが強く、わが党として容認できません。同法案については、国会で慎重審議を通じて問題点をつまびらかにすべきです。政府・与党は同法案の今国会での成立を図る方針ですが、わが党は廃案とするよう求めるものです。もとより世界でテロが頻発するなか、対策強化が重要であることは言うまでもありません。2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックはテロの格好の標的となりかねないだけに、ホスト国としてテロ対策に万全を期すべきです。水際対策や情報収集の強化はもちろん、原発などのエネルギー施設や重要交通インフラの警戒警備を徹底するべきです。政府に対しては、現行法でのテロ対策強化を図るよう求めるものであり、それでもなお、テロ対策には新たな立法が必要というのであれば、対象犯罪をさらに絞り込んだうえで、各々の立法事実の存否の精査を踏まえ、個別法への予備罪新設を検討すべきと考えます。」

 

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