2017年
6月
25

豊洲移転問題、追加対策の必要なしー税金の無駄遣いは許さない

小池都知事は今月20日、築地市場を豊洲市場に移転した上で、築地を再開発する意向を表明しました。2016年11月に開場予定であった豊洲市場について、土壌汚染問題をめぐる懸念から、小池知事が移転を延期し、混迷を招いてきましたが、そもそも延期することに合理性はあったのでしょうか。豊洲市場の「環境リスク」についてまとめます。

1.地下水を使用しないのに「水質環境基準」で議論することは大間違い

・豊洲市場の安全性について、飲み水の基準となる「水質環境基準」をもとに地下水の水質が議論されていますが、豊洲では地下水を使いません。したがって、安全性の尺度として「水質環境基準」を用いることは全くナンセンスであり、議論の土台が根本的に間違っています
・土壌汚染対策法に則れば、豊洲の環境基準は「土壌環境基準」で議論されるべきです。もともと豊洲では徹底した土壌汚染修復を行い、「土壌環境基準」をクリアしました。ただ、同基準は「対象となる100 グラムの土を1Lの水で6 時間振とうし、(上澄みをとった上で)、その溶出水を70 年間、毎日2Lずつ飲み続けても安全であると言えるレベルまでリスクを低くする」ことを求めるものであり、豊洲の土の安全性を議論するための基準としては、大幅に過剰であることも事実です。

2.有害物質が検出されても、曝露されないためリスクは極めて低い

・百歩譲って、豊洲市場の安全性の尺度として全くナンセンスな「水質環境基準」を用いたとしても、有害物質が「検出される」ことと「リスクが高い」ことは、イコールではありません。環境リスクの大きさは、「リスク=有害性×曝露量」で評価します。「曝露」とは、有害物質にさらされることを言います。
・第9 回の地下水モニタリングの結果において、ベンゼンが「水質安全基準」を79 倍超過していることが明らかになり、これが大問題であるかのように扱われました。しかし、地下水には誰も曝露されない(誰も使わない・飲まない)ため、リスクはほとんど皆無であるといえます。(注1)(注2)
・「水質安全基準」は、その水を1 年365 日、70 年間飲み続けても影響がない値となっていますが、豊洲の地下水を飲み続ける人がどこ にいるでしょうか。したがって、地下水モニタリングで有害物質が検出されたとしても、曝露されないため「リスク」にはなりません

(注1)地下水から気化したベンゼンも屋外環境と大差なく、環境基準以下だった。また、調査当日(4/19)は、空気中のベンゼンの濃度も高く、同調査結果 がその影響を受けている可能性もある。
 (注2)地下ピットについて、排気口から有害物質(水銀)が漏出する可能性はあるものの、周りの空気ですぐに希釈されるため、実際の曝露濃度は基準 値を下回ることになります。

3.追加対策は必要なし

・以上のことから、豊洲市場は本来の環境基準である「土壌環境基準」を満たしており、安全性の尺度として全くナンセンスな「水質環境 基準」を用いたとしても、地下水には誰も曝露されない(誰も使わない・飲まない)ため、環境リスクの観点から安全性に全く問題はなく追加対策が不要であることは明らかです。
・環境基準を満たして建設された豊洲市場に、ナンセンスな「水質環境基準」を持ち出して都民の不安を煽り、風評被害を招いた責任は小池知事にあります。「安心」のための追加対策は、小池知事が作り出した風評被害への追加対策に他なりません。

 

「環境リスク」という観点から見て、小池知事による豊洲移転延期は、明らかに「誤り」であったと断ぜざるを得ません。 数百億円にも及ぶとみられる、不必要な追加対策による税金のムダ遣いは許されません。

「江夏正敏の闘魂メルマガ」

時事問題や日本・世界の情勢を「やまとことば」でやさしく解説します。

また、江夏正敏の活動情報やコラムなどもお届けします。

配信頻度は月2回程度。

 

ご希望のメールアドレスを入力し、登録ボタンを押してください。