1987年、米ソはレーガン大統領とゴルバチョフ書記長時代に、中距離核戦力(INF)全廃条約に調印しました。
それにともない、1991年までに、米ソ両国は条約を履行し、配備していたミサイルを退役させました。
ところが、昨年2017年12月に、アメリカはロシアがINF全廃条約に違反する巡航ミサイルの配備に至ったとして、ロシアの条約遵守を求めつつ、アメリカも中距離ミサイルを含む軍事構想や選択肢の見直しなどにも着手する旨を表明しました。
なぜロシアは中距離核戦力に手を出すのでしょうか。冷戦終結後、ロシアは通常戦力において、アメリカに対して劣勢です。これを補うために、核戦力を重視し、近代化を優先的に進めているからです。
このロシアの新型ミサイルによって、アメリカは欧州の同盟諸国が脅威にさらされることになります。
それに加えて、中国はこのような条約とは無関係で、好き放題に中距離ミサイルを開発しています。このままでは、西太平洋において、米軍の基地や空母が危険にさらされ続けます。すでに脅威と言ってもいいぐらいの状況です。
今回のINF全廃条約の破棄によって、トランプ大統領は、ロシアは当然のこと、中国の封じ込めも視野に入れているのです。
トランプ大統領のアメリカは、「国家安全保障戦略」(2017年12月)において、アメリカと同盟国に競争を仕掛ける主要な挑戦者は、中国とロシアという「修正主義勢力」、イラン及び北朝鮮という「ならず者国家」、ジハード主義テロリストをはじめとする「国境を超えて脅威をもたらす組織体」の3つを掲げています。特に、「中国とロシアは、アメリカの利益に挑戦し、安全保障と繁栄を蝕もうとしている」としています。
つまり、トランプ大統領は、アメリカに挑戦する中国やロシアに対して、当初から厳しい態度を表明しており、今回のINF全廃条約の破棄も、その文脈からすると、起こるべくして起こったとも言えると思います。決して、トランプ大統領の気まぐれや思いつきではありません。
日本は、アメリカを支援しつつ、中ロを分断させ、アメリカの中国包囲網に、ロシアを取り込むように尽力すべきです。
Official portrait of President Donald J. Trump, Friday, October 6, 2017. (Official White House photo by Shealah Craighead)