2013年
12月
14

北朝鮮№2の張成沢氏処刑をどう読む

北朝鮮の№2である張成沢氏が処刑されたことは全世界に衝撃を与えました。

多くの報道がなされていますので、時事問題に関心のある方はご存じとは思いますが、時間のない方のために、簡単にまとめてみます。

まず異常性を感じるのは、拘束されてから4日で処刑されたことです。人の命がかかっている死刑(処刑)は、罪状を確定するのに慎重であるべきというのが文明国の在り方です。充分な反論もできずに処刑されることは、国民に恐怖を与えます。独裁の一番恐ろしい面が出ていると言ってよいでしょう。しかも、報道によれば「機関銃で射殺」とのこと(真偽はわかりませんが)。体がバラバラになる恐ろしい処刑です。

もともと張氏は金正日総書記の長男である金正男氏に近く、「罪状」の一つが「後継者問題を妨害する大逆罪を働いたことにある」としています。

また、張氏に対して軍部の反発もあったようです。張氏は軍部の利権を奪って、対中貿易を通じて財源確保しようとしたとの分析もあります。

さらに今回の注目点として、北朝鮮当局より「国の経済と生活の破局が広がっているにもかかわらず、現政権が何の対策も講じることができないという不満を軍隊と人民に抱かせようとした」「一定の時期になり経済が落ち込み国家が崩壊直前に至る」などと処刑と共に罪状が公表されました。ある意味、北朝鮮らしくなく、国内事情をさらけ出しています

なぜリスクを冒してまで、早々に処刑し、その理由を「国の不安要因」と共に発表しなければならなくなったのか。北朝鮮の経済が危機的であることを日米韓などにアピールし、助けを求めているのか。中国との経済交流を主導していた張氏処刑は、中国に対して何らかのメッセージが含まれているのか。いろいろな評価、分析があります。

確かに、張氏は中国とのパイプが太く、改革開放を主導していたとも言われています。ですから、張氏の処刑は中国にとっては当てつけの部分もあり、張氏の側近2人が中国に亡命を願い出ているとの報道が中国であります。また、張氏の中国と北朝鮮の経済交流が「罪状」に挙げられており、中国も衝撃を受けているとの報道もあります。張氏は中国から「北朝鮮の鄧小平」と見なされていたようで、対外的に「改革家」と位置づけられていました(この点も「罪状」に挙げられている)。中国と北朝鮮の間に何があったのか。しかし、北朝鮮は中国なしでは生きていけない国家です。中国にとっても、張氏処刑は織り込み済みで、北朝鮮と水面下で密約があるかもしれません。中国にとって、今回の処刑はあくまで北朝鮮内部の問題とし、生殺与奪の権を握っている中国にとっては、今回の北朝鮮の行動は想定の範囲内とも言えるかもしれません。

とにかく、張氏は北朝鮮における「常識家」とも言われ、核やミサイル実験に対して軍部と対立してまでも反対し、米韓と交渉しようとしていたようです。穏健派勢力の中心であった張氏が、強硬派に敗れた構図です。

金正恩政権が安定していれば、張氏を処刑までする必要もなく、政治生命を剥奪するだけでも十分でしょう。「処刑した」という事実は、政権基盤が安定していないとも言えます。韓国の情報機関も「金正恩第一書記の権力基盤が相対的に脆弱であることを示す」と指摘しています。ある意味、金正恩氏の体制固めが脆弱で、親族を処刑してまで体制固めに必死であるようにも見えます。

今までも、金正恩氏は常軌を逸した行動が目立っていたのですが、張氏がいなくなった後は、日本にとってリスクが高まりました。アメリカも今後、核やミサイル開発において強硬路線瀬戸際外交が強まると警戒しています。

いずれにせよ、これまで以上に、北朝鮮の動きを注視し、日本は本気で国防の充実を行わなければなりません

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